2019年の夏休みに過ごした、ゲストハウスでの思い出話
宮古島の北西にある人口5000人程のサンゴの島、伊良部島。その伊良部島の隅っこに静かに佇むGUEST HOUSE nesou(ねそう)
「今からチェックインできますか?」
ゲストハウスに到着したのが昼過ぎ、少し早すぎたかな、と思い、僕は玄関先から質問してみる
キッチンの方から出てきた穏やかそうな女性が笑顔で答えてくれた
「もちろんできますよー」
名前や住所を記帳すると、宿中をひとつひとつ丁寧に案内して説明してくれる。宿の中から屋上に出て一連の説明をする、その艶やかな流れに心落ち着く。
「最後までご静聴頂きありがとうございました」と最後に女性は言う、不思議な雰囲気。
nesouはオーナーのらいたさんと奥さんのあやさんの夫婦で営んでいる
nesouの名前の由来は、ゲストハウスnesouのHPにあります^^
あやさんの印象は、とても不思議。ずっと考えてみるのだけれど、語彙力のない僕には的確な形容詞が思いつかない
落ち着きがあって穏やかそうに見えるんだけれど、そんな言葉だけでは足りない。自然体、自然と一体的な感じ、凛としている、何もかもを受け入れようとしているオーラ、というか。
やはりうまく言えない、会話をしていると、吸い込まれるように何でも話せてしまう感じかな。
ドミトリー部屋から覗くnesou庭のガジュマルの木。
南国の島といっても毎日天気が良いわけではなく、台風が近づくと風が強くなり、大雨やスコールとなることも多々あって。
そんな時、旅人たちは海に入ることをあきらめて、おのおのの時間の過ごし方をする。
共有スペースには小さな黒板が掛けてあり、毎朝、宿の人がその日の天候や満潮・干潮時刻などを書いてくれている。
その日もまた風がやや強く、シュノーケリングには向いてないかも、という日。
他の旅人がまだ寝ている時間帯、僕が少し早めの朝食を取っていると、オーナーのらいたさんが手に持った黒板に何かを書いていた。
スマホで何かを調べては、黒板に何か書く。上を向いて何かを考えたと思ったら、また黒板に書き出していた
“退屈なら それもまた Good”
書き終わって、壁に掛けられたそのフレーズ。ふいに僕は、どんな思いで考えていたのだろう、と想像してみる
東京で暮らす僕が日々感じる”機械的”とは程遠いその”日常的”な作業が、この宿のコンセプトそのものかも、と分かったふうに考えてみる
ほとんどの旅人がたまに数日訪れる伊良部島での時間。天気が良くなくても、その”退屈な時間”でさえ充実だと気付かせてくれる、とてもシンプルで暖かいフレーズだ
らいたさんは一見無表情に淡々と会話をするのだけれど、話しているうちに優しさが滲みでてくる
お酒を飲んだら表情は明るくなって、その場の雰囲気を心から楽しんでるように見えるし、突然一眼レフカメラか何やら取りだして、ゆんたくで盛り上がる旅人たちをおもむろに撮りはじめる
自然や音楽、伊良部島が大好きなオーナー。
この宿にリピーターがよく来る理由がとても分かる
申し出れば夕食を用意してくれ、オーナーや宿の人も一緒に食べる
他の旅人と一緒に食べる夕食は、とてもいい時間
「コモのハンバーグが美味しいよー」
「このゲストハウスの油淋鶏美味しいんだよねー」
「南風の場合はサバ沖で泳ぐのがいい」
「はなしろレンタカーが一番安いよー」
とか、旅人にはとても嬉しい有力情報たっぷりの会話が飛び交う
この日は週に1度?の夕食持ち寄りの日。初対面同士でもひとつのテーブルを囲み、会話を楽しむ。
天気が良い日、オーナーらいたさんの一言で屋上で夕食を取ることもある。
「今日は屋上で夕食だって!」とヘルパーさんが旅人たちに伝えると、旅人たちはみな「おぉー」「やったー!」と笑顔を見せる
大きなテーブルをみんなで囲んで夕食
食後は、恒例の食器洗いじゃんけん勝負。何やら揉めているのか。(左:あやさん、右:らいたさん)
食器を洗うことなど何も大変なことじゃないのに、意外に僕も真剣になる。
この遊び心がこの宿に心惹かれる理由の一つでもある
天気が良い日は、週に3回程度、宿主催のシュノーケリングツアー。
シュノーケリングスポットは固定ではなくて、伊良部島中を知り尽くしたオーナーたちがその日決める
正確に言うと、その日決めるというか、1つ1つスポットを車で周り、天候や波の高さ、風向きや強さを見たその場で決める
シュノーケリングツアー初めて参加しましたが、最高に透明度高くて感動しました
1時間程度泳ぎ、岸のほうまで戻ると、あやさんが「水中息止め」勝負しようと提案した。
すると、らいたさんが「1位の人は今日泡盛飲み放題!」と、さらに煽る
そして、意気揚々と宿の人たちほぼ全員参加。
次々と耐えられなくなって顔を水面から出す中、あやさんはしばらく経った後、2分強のタイムで顔を出した。
「おぉー」と声があがる、けれど実はもう一人顔を出していない男性の旅人が3分の記録を出した。
さらに大きな歓声があがった「おおぉーすごいー」。水泳経験者なんだってさ、すごいね。
その後、どうしてもあやさんが再度勝負をしたいといい、3分6秒の記録を出して勝った。
そして、少しお茶目な感じに笑顔で言った、「泡盛いただきまーす!」
スタティックアプネア(水中息止め)で真剣勝負。少し異様。
この日天気は良く、シュノーケリングツアーは1日中。合間の昼食はみんなで一緒に。
ある日、伊良部島からの朝陽を見るため、早朝から車を走らせ、オーナーおすすめスポットに行った。
しかし、残念ながら、その日は水平線には雲が横たわっており、水平線から顔を出す太陽を見る事はできなかった。
その後、ずっと晴れていた上空にも、雲がちらほら。ときたま通り雨も降っていた
残念そうに帰ってきて、しばらくゆっくりしていると、屋上にいたヘルパーさんが宿の中に入ってきて、「虹がでてるよ!」と教えてくれた
そして、すぐに屋上に上がる
雨上がりの下地島上空の虹を指差す、らいたさんとヘルパーさん。
思わずカメラで撮ったこの光景、僕はとても好きだ
この場所には、自然のすべてを、共有したり、共感したり、感動できる、余裕があるんだなと感じた。
毎日見ている当たり前の景色でも、キレイだ、といえるくらい心に余裕ができる
そしてあいかわらず、らいたさんはクールに言う、「雲のせいで朝日は見れなかったけど、代わりに虹が見れたね」と。
冷蔵庫には旅人の名前ごとの伝票が貼られていて、最終日に会計する
nesouの本棚。並ぶ本のタイトルを眺めていると、その人の歩んだ人生や生き方を垣間見れる
男女共用のドミトリー。冷房あるので夏でもそんなに暑くないらしいです(僕は個室でした)
お盆が過ぎる頃、まだ暑さのない朝早く、窓やドアを開くと風がさーっと通り抜け、日焼けで熱を持った肌を涼しく撫でる
遠くでは、沖縄の郷土曲を流した、ごみ収集車がゆっくりと走っている。
「あ、今日は燃えるゴミの日だ」と、ヘルパーさんが静かにつぶやいた
気まぐれな風に乗ったその心地よい音楽が聞こえると、僕はほんの一瞬だけ伊良部島の暮らしに溶け込めたような気がした
nesouを拠点にした宮古島、伊良部島の旅も最終日。
最終日の朝の景色を見ると、いつも夏の終わりを感じる、それは自身の夏休みが終わるからかもしれない
朝から晩まで見たことのない景色を見ていると、たった数日前でさえ、ずいぶん経ったように感じる
数日間宿泊した足跡。「ドナドナ 8/22」何か分かりますか?^^
清算が終わり荷物をまとめ、共有スペースでゆっくりしていると、
「りょうさん、コーヒー飲みます?」
こだわりのコーヒーを豆から挽いて振舞ってくれた
コーヒーは好きだけれど、詳しくはない。香りがとても良かった気がする。
僕はまた、この宿に泊まろうと思う
最終日に記念撮影(左:あやさん、右:ヘルパーさん)
眠りから覚めた早朝
1歩外に出ると自然いっぱいの匂い
田舎の静かな朝に感動する自分
東京で雑踏に埋もれた自分が日々考える、
あるべき姿とか、負けたくない自分とか
そんな毎日の悩み事が、小さく思える
僕にとって沖縄はそういう大切な何かを思いださせてくれる場所
夏の日の夕焼け。宿の屋上から旅人たちと見る